紙のワークからAI型教材へ、「とりあえずキュビナ」が定着するまで
京都府宇治市立西小倉中学校では、紙のワークからAI型教材への移行を進め、キュビナを家庭学習やテスト前の学習に活用しています。導入当初は、教員・生徒の双方に戸惑いもありましたが、活用場面を設定しながら慣れる機会をつくることで、現在では生徒がすきま時間に自分でキュビナに取り組む姿が見られるようになりました。
同校が目指したのは、知識の定着をAIドリルに任せ、授業では思考力・判断力・表現力を育むことにより注力することです。紙のワークを「提出するためだけ」にするのではなく、成果や過程を評価する形へと見直しながら、学習のあり方を変えてきました。
※本記事は2026年6月開催の活用事例共有イベントの内容をまとめたものです。石居先生による実践発表の様子は、以下の動画でもご覧いただけます。
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紙のワークからの転換を、授業改善のきっかけに
西小倉中学校では、令和4年度にキュビナの導入を決定し、令和5年度から本格的に活用を始めました。導入の背景には、知識を教える授業から脱却し、知識の定着はAIドリルに任せ、授業では思考力・判断力・表現力を育むことに注力したいという考えがありました。

導入前は、紙のワークが「提出のためだけ」になってしまうことが課題でした。教員がワークの提出状況を評価する一方で、生徒が本当に自分で解いたのか、答えを写しただけなのかが分かりにくい面がありました。
また、定期テストの際には大量のワークを回収し、教員が点検する必要がありました。紙のワークを教室や職員室に運び、確認する時間も大きな負担になっていました。
自立的な学習習慣が確立している生徒にとって、紙のワークは発展的な問題に取り組む教材として有効でした。しかし、これから学習の土台を作っていく段階の生徒にとっては、答えを写す作業になりやすく、学力の定着につながっているのかという課題がありました。

キュビナで基礎学力を支え、評価方法も見直す
導入の狙いは、紙のワークからキュビナへ置き換えること、評価方法を見直すこと、教員の授業改善につなげることでした。

キュビナを導入することで、答えを写すという行為自体を減らし、誰もが取り組みやすい形で基礎学力の定着を図ることを目指しました。具体的には、管理職から先生方に「ワークを買わないでください」と伝え、紙のワークからの転換を進めました。
ただし、AIドリルをワークの代わりにするだけでは、今度はキュビナに取り組んだこと自体を評価する形になってしまいます。そこで、キュビナへの取り組みそのものではなく、学習の成果や経過を評価する方法へ移行することを目指しました。
知識の定着はキュビナで行い、教師の授業では思考力・判断力・表現力を育むことにより時間を使う。そのような授業改善も、導入の大きな狙いでした。
導入初期は、教員・生徒の心理的ハードルを下げる
導入当初、教員からは「AIドリルはどうなのか」「紙のワークの方がよいのではないか」といった懐疑的な意見もありました。そこで、キュビナを使う心理的ハードルを下げることに注力しました。
校内では、教務主任、研究主任、小中一貫のラーニングコーディネーター、市の教育研究員による研究推進部を位置づけました。まずは研究推進部のメンバーが授業でさまざまな活用方法を実践し、職員会議で事例を共有しました。1回につき2人ずつ発表する形で、活用している様子を見てもらいながら、発表を聞いている先生方にも実際に触ってもらう研修を行いました。

生徒からも、当初は「紙のワークの方がよかった」「どう勉強していいか分からない」といった声がありました。そこで、生徒がキュビナで学ぶことに慣れるため、学校として取り組む場面や期間を設定しました。

授業冒頭の5分間復習で、まずは使う場面をつくる
導入初期には、授業の中で教員の管理下でキュビナを使う場面を設定しました。例えば、授業冒頭の5分間に生徒が復習問題に取り組み、間違いが多かった問題を教員がその場で示して解説する形です。

石居先生自身も、毎回の授業冒頭で「やるよ」「解いてね」と声をかけ、時間が来たら結果を確認して解説する流れを繰り返しました。その実践を先生方にも共有し、同じように活用する教員もいました。
また、期限を設定したワークブックに取り組ませるなど、最初の段階では、ある程度取り組む場面や量を決めて使うこともありました。生徒が操作に慣れ、キュビナで勉強することに慣れるための期間として位置づけていました。
現在は、家庭学習やテスト前の学習ツールとして定着
現在では、授業内での活用は導入当初より少なくなっています。キュビナは、家庭学習用のワークに近い位置づけになり、授業内で必ず使うものというより、学習ツールの一つとして定着しています。
例えば、単元テスト前に教員がワークブックを配信し、生徒が自分で取り組む形が中心です。キュビナへの取り組み自体は評価せず、生徒が取り組んだ結果として表れる単元テストやパフォーマンステストの内容を評価しています。
導入当初は、「キュビナを使うこと」が目的になっていたところがあったかもしれません。しかし現在は、かつての紙のワークと同じように、生徒が学習に使うツールの一つとしてさまざまな場面で目的に応じた活用が進められています。

すきま時間に「とりあえずキュビナ」
生徒は、休み時間や取り組むべき課題が終わった後など、学校生活のさまざまなすきま時間にキュビナを活用しています。生徒はiPadを常に持ち歩いているため、時間があれば自分がやりたい教科や単元に取り組むことができます。
紙のワークのように「やり切る」ことを強制されるのではなく、自分が取り組みたい時に取り組める点も特徴です。石居先生は、やらされる学習から、自発的に取り組む学習、自走する学習へと変わってきていると感じています。

同校では、「とりあえずキュビナ」という言葉も定着しています。単元テストや定期テストまでの期間に、「何をしようか」と迷った時、「とりあえずキュビナをやろう」と生徒が考えられるようになっています。

導入初期には、ある学年主任の先生が「キュビる」という言葉を使って生徒に声をかけていました。そうした言葉も、生徒がキュビナを開くきっかけになり、学習文化として定着していきました。
基礎学力の定着に成果、発展層への手立ては課題
学力面では、基礎学力の定着率が上昇したのではないかと石居先生は感じています。同校の各種調査の結果からも、キュビナ導入以前と比べて学力分布の中心付近に位置する生徒の割合が増え、学習の土台を作る段階にいる層が減少する傾向が見られました。
全国学力・学習状況調査の数学では、正答数が0〜4問の生徒の割合が全国や府の平均よりも低く、ほとんど答えられなかった生徒が少なくなっていることも確認されています。キュビナの「いつでも取り組める」「自分のペースで個別最適化されたドリルに取り組める」という強みが、基礎学力の底上げにつながったと考えています。


一方で、学習内容の理解が深い層、自立的に学習できる層の伸び悩みは課題です。キュビナはサクサク取り組める点が強みである一方、より発展的な問題や応用問題に取り組みたい生徒にとっては、物足りなさにつながる可能性があります。今後は、そうした層に対するプラスアルファの手立てを検討していく必要があります。

保護者への説明と、家庭での学習の見える化
紙のワークから移行する際、学校から保護者には4月当初に文書で案内しました。保護者から大きな抵抗はなく、むしろ生徒の方に戸惑いがあったといいます。
その後は、毎年11月の新入生保護者説明会で、学校としてキュビナを導入していることや、学習の形が変わっていくことを説明しています。また、導入初期には学年懇談会で学年主任が丁寧に説明する機会もあり、保護者の理解につながりました。
一方で、保護者からは「家庭でタブレットを触っているが、勉強しているのか遊んでいるのか分からない」という声もありました。今後は、保護者レポート(保護者用の学習履歴連携機能)によって家庭での学習状況を見える化し、学校と家庭との連携を進めていくことを、石居先生は期待しています。
紙のワーク回収がなくなり、心理的負担も軽減
紙のワークを廃止したことで、教員の業務負担にも変化がありました。職員室に大量のノートやワークが積まれることがなくなり、それだけでも心理的な負担は軽減されたといいます。
ワークの点検に時間を使うのではなく、生徒がキュビナで学習した結果を踏まえて、先生がどのような授業展開をするかなど、本来の授業づくりにより時間を使えるようになったといいます。昨年度までは、教員が早く退勤できる日も多く、学校全体としても業務負担の軽減につながっていたと振り返っています。
ただし、導入から4年目を迎えた現在でも、「紙の方がよいのではないか」という意見が再び出ることもあります。石居先生は、こうした波は一定程度繰り返されるものだと捉え、その都度、学校としての取り組み方を丁寧に説明することが大切だと考えています。
今後は小テスト、保護者連携、研修、発展層支援へ
今後の展望として、西小倉中学校では小テスト等での活用、保護者レポートによる学習の見える化、教員への定期的な活用研修、発展的な問題に取り組みたい層への手立てを挙げています。

小テストについては、すでに各教員がキュビナ テスト(キュビナのCBT機能)を活用し始めています。現状では、学校全体として単元テストそのものに置き換えるというより、細かい範囲で知識の定着を確認する小テストとして活用しています。今後は、キュビナテストとペーパーテストを組み合わせたハイブリッド利用を進めていく考えです。
また、教員の異動がある中で活用レベルを維持するため、定期的なミニ研修も行っています。新しく来た教員に、学校でどのように活用しているかを説明し、実際に操作してもらうことで、活用率の安定化を図っています。
学習に迷ったら始められる仕組みとして
西小倉中学校の実践では、紙のワークからキュビナへ移行することで、提出や点検のための学習から、必要な時に自分で取り組む学習へと変化してきました。
導入初期には、教員・生徒ともに戸惑いがありましたが、授業冒頭の5分間復習や期限付きのワークブックなど、使う場面を設定しながら慣れる機会をつくりました。現在では、テスト前やすきま時間に「とりあえずキュビナ」と考えられるほど、学習ツールとして定着しています。
生徒が何を勉強すればよいか迷う時間を減らし、すぐに学習に入れること。学校として基礎学力の定着を支えながら、授業では思考力・判断力・表現力により注力すること。キュビナを、学校全体の学び方を変えるきっかけとして活用している実践です。
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